万年筆のはなし
『鍛造』、『鋳造』ときて、『万年筆』とはまったく脈絡がないが、
コラムとは爾来(じらい)、そう云うものである。
例によって先ずは、万年筆を講談社発行の日本語大辞典で引いてみる。
【中空の軸内に入れたインクが軸先に伝わって
継続的に字を書けるようにしたペン。fountain pen】
とある。
至極簡潔な判り易い文章である。が、若干補足させて頂こう。
軸内に吸入器(コンバータ)方式やカートリッジ方式によってインクを保持し、
溝の入ったペン芯の毛細管現象によりインクをペン先(ニブと云う)に継続的に
供給する構造の筆記用具である。
毛細管現象!!! これが重要なのである。
筆記用具に毛細管現象なんて言葉が出てくる時点で、万年筆は只者ではない。
万年筆は様々な構成部品(軸胴やキャップも含めて)から成っているが、
特筆すべきはペン先であろう。
素材は主に、金(ゴールド)を用いている。それは金の資産価値ゆえではなく、
性質特性ゆえである。金の特性である軟らかさがペン先を適度にしならせ、
心地よい書き味をもたらせてくれるのだ。
純金では耐久性の面で問題があり、多くは14K、若しくは、18Kを使用する。
ペン先のまさに先端(実際に紙と接触する部分)をペンポイントと云い、
イリジウムと呼ばれるプラチナ系合金が溶接されている。
イリジウムは耐酸性に優れ、酸性であるインクに対して効果的で、
また硬度はダイヤモンドに次ぐと云われ、
耐摩耗性に於いて威力を発揮するのである。
なんと贅沢であろうか。金にプラチナにイリジウムである。
高級貴金属のオンパレードだ。但し、あくまでも高級品の場合です。
(比較的安価なものは、ステンレスや鉄を使用しています)
ペン先には、素材の違いの他に、もうひとつ重要なファクターがある。
書ける線の太さである。代表的には五種類あり、
EF(極細字)、F(細字)、M(中字)、B(太字)、BB(極太字)と略号で表される。
これは、ペンポイントを砥ぎ、実現させているが、万年筆マニアは、
好みに合った太さを求め、自ら調整する兵(つわもの)も存在すると聞く。
また、愛用している間にどうしても磨耗してしまう部分でもあるため、
修理し調整してくれる専門の職人さんも居られる。
(修理・補修ではなく、新品をその人に合わせて調整することもあるらしい)
決まりはないのだが(あくまでも私の好みとして)、
太字は男性、細字は女性と云う感じがする。
インクをたっぷりと含んだ太いペン先で原稿に向かう西洋の文豪のイメージであり、
華奢な女性が細いペン先で何やら手帳に書き込む姿は、真にセクシーである。
少し饒舌(じょうぜつ)過ぎたかも知れぬ。
続けてインクについてふれようと思うが、ここで紙幅が尽きた。
次回も引き続き、万年筆の話(続)を書かせて頂こう。
次回へ続く |
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