万年筆のはなし(続)
前回に引き続き、万年筆の話である。
先ずは、万年筆で使用するインクについてである。
軸内にコンバータ方式やカートリッジ方式によって保持されるインクは、
英語のfountain penの名の由来通り、
泉の如くペン先から絶え間なく供給されるのである。
以前はインク壷に羽ペンを浸し書いていたが、その手間から開放されたのである。
そう云えば、日本も硯(すずり)で墨をすり、
筆先に浸して書いていたが、今は筆ペンがある。
カートリッジ方式は、手軽で初心者にもお勧め出来るが、
しかし私は是非、コンバータ方式を使って頂きたい。
万年筆を選ぶ際、カートリッジ方式・コンバータ方式両用と云う、
どちらも使える欲張りなものをチョイスして頂きたい。
慣れない最初の内はカートリッジを使い、
慣れてくるとコンバータ方式に切り替えるのがお勧めだ。
インクには当然、様々な色がある。
カートリッジ方式ではメーカーが用意してある
決められたベーシックな色(黒、青、赤等)を使用せざるを得ないが、
コンバータ方式はインク瓶から吸い上げて使用するため、
そのカラーバリエーションは豊富である。
各万年筆メーカーが専用のインクを何十種類も発売しているし、
インク専門のメーカーもある。
気分に合わせて、用途に合わせて、色んなインクを使い分けるのも楽しい。
(そのためには万年筆も複数必要だが……)
私の場合、通常は黒を使用しているが、個人的なメモや書き物の場合は、
インクを配合してオンリーワンの色を使用している。
オレンジ掛かったブラウンを目指して各種の色をブレンドしたのだ。
(インクを混ぜ合わせる場合は同じメーカーのものを使用して下さい。
他メーカーのインクを配合すると成分が分離したりするので、
万年筆を傷めることになる可能性があり、お勧め出来ない)
インクの話の最後にブルーブラックインクについても言及しておこう。
公文書など劣化しては困るものに使用され、最もポピュラーなインクで、
最初はブルー系であるが、年月が経過すると黒く変色し定着すると云うインクだ。
鉄分が含まれ、それが酸化することによって黒く変色する。
ひとつは持っておきたいものである。
最後にやはり万年筆メーカーについてふれない訳にはいかないだろう。
駈足で恐縮だが、お許し願いたい。
先ずは日本から、
国内三大メーカーと云われている『パイロット』、『セーラー』、『プラチナ』である。
『パイロット』は国内最大手で、蒔絵シリーズ等の名品がある。
次はドイツ。何と云っても『モンブラン』であろう。
あの雪のマークは、水戸黄門の印籠である。名だたる作家や著名人が平伏した。
「マイスターシュテュック」シリーズは、あまりにも有名である。
『ペリカン』。
「スーベレーンM800」は、万年筆の最高傑作であると云うマニアは非常に多い。
「ペリカーノジュニア」も忘れてはならない。
本国では、子供の万年筆入門用だそうだが、なかなかどうして侮れない。
少し太めの軸胴の持ち心地、なめらかな書き心地、実に逸品である。
ドイツは万年筆王国なのか、他にも有名なメーカーが目白押しだ。
『ラミー』、『ファーバーカステル』、『ロットリング』……。
『ラミー』には、「サファリ」と云うお洒落なフォルムでカラーバリエーションがあり、
価格もお手頃で、普段使い出来るシリーズがあり、お勧めだ。
しかも、カートリッジ方式・コンバータ方式両用である。
(コンバータは別途購入が必要である)
『ロットリング』は、製図用ペンの代名詞になる程有名である。
私も昔は0.3、0.5、0.7と3本持っていた。
CAD隆盛のこの時代、もう使用することは無いだろうが…。
フランスでは、『ウォーターマン』で、
現在の万年筆を発明したL.E.ウォーターマンが創始者である。
イタリアでは、『アウロラ』。
世界最初に美術館に永久保存されたメーカーとして有名である。
イギリスでは、『パーカー』と『ヤード・オ・レッド』。
アメリカは、『シェーファー』あたりか。
私は密かに(って、何も密かにじゃなくていいのだが)、
ここに挙げたメーカーの万年筆をたとえ一本づつでも持ちたいと考えている。
ブランドのネームバリューや価格ではなく、
軸胴の感触、ペン先の太さ、書き心地等、自分にあった名品を見つけたいものだ。